shohin2006 春の風景T 2006/04/08 橋の上から川を見ていた。 水の流れが見えない。 それほどにゆっくりである。 水位が上がっている。 潮が満ちてくるのだ。 「今度、また会える?」 貴女の声にドキリとした。 「…」 「ねえ?」 私は俯いたまま、川を見続けた。 何も答えられなかった。 貴女は私の顔を暫く見ていたが、 それきりもう何も言わなかった。 二人で黙って川を見ていた。 穏やかな春の午後で、暖かく、風もないでいた。 平和な街の平和な風景。 眠気を催すほどに。 潮がいよいよ満ちて、水が逆流し始めた。 遠い街に帰っていく貴女の肩が私に触れた。 |