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shohin2006

はらり

2006/02/26


はらりと散りし
あの人の わずかばかりの 想い出を
もてあます夜 浅き春

覚えています
あの人の 胸の鼓動と 熱さとを
水面(みなも)の月の 冷たさよ

銀の刃(やいば)で
水を切り 水面の月を 消したれど
幾度斬ろうが 消えぬ恋

あの人の血を
ふりそそぎ 水面の月を 染めたれば
この身をひたし 沈めましょ

「そなたの唇に くちづけするよ」

古(いにしえ)人の
その台詞 あなたは首を 手に入れた
なにもなき身に 苦き春

沈めしこの身
水底に あなたの血潮に いだかれて
ふたたび映る 水面の月

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